桂浜公園 本浜休憩所
全国から多くの観光客が訪れる高知を代表する観光地「桂浜」敷地は太平洋と竜王岬を望む本浜の中心に位置する。南側は雄大な太平洋、北側は旧浦戸城を峰とする急峻な斜面を持つ。そして周辺には松原が厳しい環境に耐え抜き逞しく育つ。
土佐の強烈な自然環境を凝縮したこの空間は桂浜という場所柄も相俟ってか、恰も土佐人の豪快さ・開明さと結びつく。
敷地を歩いてみた。
年々脅威となっている強い日差が海面と砂浜を照り返す。
しばらくして松原の袂に逃げ込んだが、針のような形態の葉からの木漏れ日に佇む光と影は、どことなく心もとないが厳しい自然環境の中で一種の安らぎを与えてくれる。
この「陽・陰」の対比に内在する繊細な「緊張感」、
これこそ桂浜、ひいては土佐人を体現するものではないだろうかと考え、建築をカタチづくるテーマとし設計を進めた。
自然素材(木・漆喰・太陽・風・雨など)と工業製品(鉄・コンクリートなど)との対比を意識的に行うことで空間に緊張感を生み出す。
私たちはこの手法を「切れ味の美」と呼んでいる。
建築空間は、天井、それを支える柱と壁といった最小限の要素とコアを中心に林業県高知を代表する木材「桧」を用いたルーバーが廻る回廊空間とし、視線の先にある松原に呼応させた。
そして、耐久性を最優先としながらも「切れ味の美」を意識した素材の対比・ディテールを随所に用いている。
すり鉢型のルーバーによって縁取られた風景はベンチに腰を下ろして静態することで、砂浜から眺める風景とは違う表情を見せてくれる。やがて来訪者は松原の袂のような緊張感の中に内在する安らぎを得る。
この場所だからこそ、じっくり腰を据えることで見えてくるものがある、めまぐるしく状況が変化する今の時代だからこそ、郷土の先人達が見つめた雄大な太平洋を眺めながら、来訪者は想いに耽け、次の時代(とき)へと進む。
所在地 高知市
構造種別 RC造 1階建
延床面積 186.49㎡
竣工年 2021
第38回高知市都市美デザイン賞