第二回

―ピカッと・キチッと・ドシッと― 静けさについて

静けさについて、「緊張感漂う静かな空間が好き。その静けさ」と先に記しました。その静けさはどのように得ることができるでしょうか。主に三つのことを試みています。

 

一つは、土佐の強い日射しがもたらす影をデザインに取り込みます。雨より建築を護る面からも深い軒を持つ建築を旨としていますが、影が強調できる形・素材・色を考えます。その濃い影と強い日射しの対比に緊張感を見ます。

 

一つは、ローテックな土佐の恵(土佐漆喰、石灰石、土佐材、土佐和紙等)とハイテックな工業製品(ステンレス、アルミ、ガラス、コンクリート打放し等)をぶつかり合わせます。石灰石とPC版、土佐漆喰とアルミ、木製パネルとステンレス、渋紙とステンレス等々です。そのぶつかる面に緊張感を見ます。「切れ味の美」と名付けています。昔から大工の腕の良し悪しは(のこ)、ノミ、(かんな)の切れ味、左官の腕の良し悪しは鏝捌(こてさば)きで評価されてきました。つまり、木の切り口、漆喰の塗り面の際立ちの良さに緊張感を見ます。木の持つ柔らかい肌合い、悪く言えば曖味さも名工の切れ味鋭い技にかかると刃のように感じます。恰も有機質である木が無機質な金属と化したようです。この「切れ味の美」が求められるのには理由があります。現在、土佐の恵みそのものの切り口、塗り面に際立ちの良さを求めるのに十分な有能な職人は多くありません。十分いたとしてもその人たちを集めることは経済的に不可能です。まして、大規模な建築では到底不可能です。また、石灰石・土佐漆喰・土佐材・土佐和紙等それぞれの恵みは安価で大量にありますが、恵みそのものに緊張感を求めるにはどれも甘過ぎる表情です。合わせて、品質のバラツキにいつも手を焼いています。それらを解決すべく「切れ味の美」の手法を用いて、緊張感を見ます。

 

一つは、ローテックな恵や技はハイテックに処理します。甘い表情の土佐の恵を規格化とかシステマティックに組むことで工業製品がもたらす緊張感を見ます。石灰石は石灰石積みブロック、木材は外壁に杉板下見板パネル・内壁に桧吸音ルーバーユニット・天井に桧ルーバーユニットを試みています。また、木造建築に対し、土佐の家「納屋型」、大きな家「肘木型」と名付けた木材を規格化してシステマティックに組み上げる構法を試みています。同じサイズの木材、同じ仕様の恵み達の並ぶ様に、恰も工業製品がもたらす緊張感を見ます。